先の東日本大震災で私が痛切に感じたのは、いつのまにか地域における人とひととのつながりが弱くなってしまったということでした。地震の直後、水や電気や食料など足りないものはたくさんありましたが、もっとも深刻に思えたのは手伝ってくれる人、片付けてくれる人、すなわちマンパワーの不足だったからです。
「そこに住む人々がみな顔見知りで、街で出会えば気軽に話ができるかつてのような人のつながり、地域のつながりを取り戻したい! メディアステーションが運営するショップを絆再生の場にする!」
震災以降、これが私の大きな夢になりました。
具体的には、すべてのショップを単なる携帯電話の販売店ではなく、次の「3つの場」に進化させることでこの夢を実現させたいと考えています。
ひとつめは「学びの場」です。
いま私たちはスマートフォンという魔法の機器を手にしています。音楽(CD)、映画(DVD)、本、地図、写真、ゲームソフト、カレンダー、システム手帳など、さまざまな「形あるモノ」はデジタル化され、どこでも好きなときにスマートフォンから使えるようになりました。
まさに便利で生活を豊かにしてくれる夢のような道具ですが、だれでも簡単に使いこなせるかというと、残念ながらそうではありません。とくに、40代以上のアナログ世代にとっては多機能さゆえに複雑で難解。まだまだ購入に抵抗を感じてしまうというのが現実です。
この問題を解決するためにメディアステーションのショップを「学びの場」にします。シニア層向けに基本的なスマホの使い方をレクチャーするワークショップの開催はもちろん、趣味や健康管理に役立つアプリの活用法から、仕事に役立つSNSの使いこなし方まで、「困ったときに頼りになる場所」「新しい可能性を発見できる場所」にしたいと考えます。
2つめは「未来生活体験の場」です。
いま、メディアステーションのショップにはスマートフォンやタブレットだけでなく、ロボットやモバイルシアター、時計の形をしたウェアラブルコンピュータ、植木鉢に挿しておくと水やりの通知がスマホに届く機器など、最先端の技術から生まれた製品が数多く展示されています。
さらに、近い将来にはIoT(Internet of Things)というモノをインターネットにつなげる技術によって、自動車やさまざまな家電などがスマートフォンで管理、操作できるようになります。このような未来型の製品もすべて私たちのショップに並ぶことになるでしょう。
つまり、メディアステーションの各店は、最先端技術によって生まれる「未来生活を体験できる場」でもあるのです。大都市で行われる展示会やイベントに足を運ばなくても、身近に未来を感じられるワクワクする場所がある。そんな世界を実現させたいと考えています。
3つめは「ライフインフラ相談の場」です。
今後、大手の通信事業者は、携帯電話だけでなく、インターネット回線や電気、ガス、水、食料品、生活必需品などのライフインフラを総合的に扱うようになります。これによって、通信費と光熱費をセット購入することで料金を節約できたり、高齢者が米や水などの重たい商品をスマホで簡単に注文できるようになったり、数多くのメリットが生まれると予想されます。
このような時代になったとき、私たちのショップは総合的な生活インフラのプランナーとしての役割を担うことになります。どのサービスを組み合わせるのがもっとも得なのか、本当に必要なサービスはどれなのかなど、コスト計算のシミュレーションやコーディネイトが不可欠だからです。
さらに数年先に太陽光などの自然エネルギーが普及した際には「この組み合わせがもっとも環境に優しいですよ」といった提案ができるようになるかもしれません。いま、地域を見渡してもこのような生活全般に関わるインフラの相談窓口などありません。この素晴らしい場を私たちなら創造できると確信しています。
メディアステーションは「携帯電話を販売するだけの会社」ではありません。
私たちが商品として扱うのはデジタル機器やサービスです。でも、それらを使って実現させたいのは「人のつながり」であり「地域のつながり」です。「学びの場」として、「未来生活体験の場」として、「ライフインフラ相談の場」として、だれでも気軽に通え、集まれるスペースに進化させる。
このようなリアルな取り組みを通じて、メディアステーションは地域に根ざした「もっと温かいコミュニケーション」を創造し続けることを約束いたします。